子宮頸部異形成とは
子宮頸がんのほとんどは、子宮頸部異形成(cervical intraepithelial neoplasia:CIN)という前がん病変から発生すると考えられています。子宮頸部異形成は、異型のある細胞の割合によって軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成(CIN3)の3段階に分けられています。改善と悪化を繰り返し、自然に消失することもあり、子宮頸部異形成があると必ず子宮頸がんになるということではありません。高度異形成の場合には治療が必要となりますが、軽度異形成(CIN1)では基本的に定期的な経過観察を行います。中等度異形成(CIN2)の場合は、病変が1~2年経過しても消滅しない場合、ハイリスク型のHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が確認できる場合は治療を検討します。
軽度異形成(CIN1)
病変が自然に消失するケース | 約50~60% |
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変化を起こさないケース | 約30% |
高度異形成以上の病変に進行するケース | 約10% |
中等度異形成(CIN2)
病変が自然に消失するケース | 約40% |
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変化を起こさないケース | 約40% |
高度異形成以上の病変に進行するケース | 約20% |
高度異形成(CIN3)
軽度異形成などの病変に退縮するケース | 30~60% |
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浸潤がんに進行するケース | 約10% |
コルポスコピー検査はこれらを診断するための、大切な検査です。子宮頸部をカメラで拡大して観察し、狙い組織診などを行い確定診断をつけます。
生理直前や生理中の時期をさけて検査をうけていただく必要があります。
子宮頸がんの予防接種
(HPVワクチン)
HPVとは
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、性交渉によって感染し、長期間持続感染することで子宮頸部の細胞が変化し、子宮頸がんに進行する可能性があります。このウイルスは皮膚や粘膜の接触によって広がります。
HPVには150以上の種類があり、一般的な風邪のウイルスのように数多く存在しています。初回の性行為から4〜5年後には、女性の50〜60%が感染しており、成人女性の約8割が一度はHPVに感染するとされていますが、ほとんどは自然に消失します。
しかし、HPVのタイプによって性質が異なり、感染箇所や病気のリスクも異なります。婦人科領域では、尖圭コンジローマのウイルスもHPVに関連しています。男性では、陰茎がん、喉頭がん、肛門がんもHPVの感染に関連していることがあります。
HPVは危険度に応じて、ハイリスク群とローリスク群に分類されます。
ハイリスク→16,18,31,33,35,39,45,
51,52,56,58,59,67,68 型
ハイリスク群に感染すると、将来的に子宮頸がんになるリスクが高まります。
特にHPV16、18、31、33、35、45、52、58の8つのタイプは、自然消失が難しく、子宮頸がんに進行する可能性が高いため、より警戒が必要です。特にHPV16型と18型は非常に高いリスクがあり、子宮頸がんの半数以上でこれらの型のウイルス感染がみられるとされています。
HPVワクチンとは
HPVワクチンについて
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)は、日本では2009年に承認され、一般の医療機関で接種が可能となりました。このワクチンは、病原体となるHPVウイルスの感染能力を失わせた不活化ワクチンです。ワクチンの種類や接種の対象者によって、推奨される回数や時期、公費での接種の対象となるかどうかが異なります。
ワクチン接種の時期と効果
HPVは性交渉によって感染するウイルスであるため、ウイルスに感染していない状態、すなわち性交渉を経験する前(初交前)に接種を終えることが望ましいです。
HPVワクチンは予防に有効な手段ですが、すでに感染してしまったHPVを排除することはできません。特に若年期、思春期に接種することで、より強い免疫反応が得られます。最も推奨されるのは10~14歳の女性への接種であり、次に15~26歳の女性が推奨されます。さらに、45歳までの女性にも接種の有効性が確認されています。
予防効果は少なくとも10年間持続するとされています。これにより、女性が妊娠・出産適齢期に子宮頸がんの発症を予防できます。ただし、ワクチンを接種してもすべてのHPVを予防できるわけではありません。20歳を過ぎたら、定期的に子宮がん検診を受けることが重要です。
ワクチンの種類
予防できるウイルスの種類の数によって、3種類あります。
サーバリックス
16型・18型の2種類のハイリスクHPVの感染を予防することで、約70%の子宮頸がんが予防できます。
ガーダシル
16型・18型のハイリスクHPVの感染予防に加えて、6型と11型の尖圭コンジローマの原因となる4種類のウイルス感染も予防します。
シルガード9
ガーダシルで予防できるHPV6型、11型、16型、18型に加えて、31型、33型、45型、52型、58型の合計9種類のハイリスクHPVを標的とします。このワクチンにより、子宮頸がんの90%が予防可能とされています。
ワクチンの接種回数について
抗体の十分な生成のため、ワクチンは半年間に3回接種する必要があります。3回とも、原則として同じ種類のワクチンが接種されます。ただし、これまで1回または2回の接種が2価ワクチンまたは4価ワクチンで行われた場合でも、その後でより効果の高い9価ワクチンを希望する場合、医師との相談の上で、同じ予診票で9価ワクチンを接種できます。
※特に9価ワクチンに関しては、15歳までに1回目の接種を完了すると、2回の接種で完了となります。2回目の接種は、1回目から6カ月以上の間隔をあけて行います。
ワクチンの接種方法
ワクチンは肩に近い上腕二頭筋に注射します。WHOでもこの方法が推奨されています。接種の1時間前に、注射予定部位に痛みを和らげる貼付剤を貼ることで、接種後の副作用を軽減することができます。
接種後は20分間、院内で待機していただきます。これにより、副反応が現れた場合に直ちに対応できます。
ワクチンの接種後・
副作用について
接種後には、体内でウイルス感染に対する防御メカニズムが働くために強い痛みが発生することがあります。通常、これは数日で治まるため、心配する必要はありません。
ただし、注射部位以外での痛みや腫れ、しびれ、脱力などの異常が現れた場合は、速やかに診察を受けるようにしましょう。